解体工事業登録申請をする際に知っておくと得すること
1件につき500万円以上の解体工事を請け負う場合には、解体工事業の登録ではなく、建設業の許可を受けなければなりません。しかし、500万円未満の工事であれば、建設業許可よりは審査要件が簡易な解体工事業の登録を受けることで、解体工事業を営むことができます。
建設業許可のうち、土木一式工事業、建築一式工事業、解体工事業(※平成 28 年 6 月 1 日時点でとび・土工工事業の許可を受けて解体工事業を営んで いる建設業者は、平成 31 年 5 月 31 日までは、解体工事業の許可を受けなくても 引き続き解体工事業を営むことができます。)を取得すれば、全国どこでも営業することができますが、解体工事業の場合は、営業をする現場の都道府県知事ごとに登録を事前に受けていることが必要です。
過日、当事務所に新たに解体工事業者として独立した社長さんから、解体工事業を営むに際して、「建設業の許可は取れないか?」と電話相談を受けました。
社長さん自身は実務経験は解体工事業登録業者の下で10年以上の経験がありましたが、残念ながら、取締役としての経験がなく、会社に他の取締役もおらず、建設業の許可は無理ということがわかりました。
そこで、解体工事業の登録申請ということになったわけですが、この解体工事業登録申請は建設業の一環だから、建設業許可と同じような基準で審査されるのかというと、実はそうではなく、より簡便な審査なのです。
すなわち、建設業許可の資格要件を証明するために必要な書類が解体工事業の登録では省略できたりしますので、行政書士に相談してください。
解体工事業登録と建設業許可の審査の違いの主な点を述べてみます。
まず、実務経験証明書です。
これは、建設業許可業者の場合、技術者の資格要件を実務経験を含めて申請する場合は同じような書類があり、許可を持っていた業者に勤務していた場合は、その会社の代表者から証明をもらえばその業種について裏付け書類である工事請負契約書や注文書、請書、請求書等の原本の提示が省略できますが、無許可業者に勤務していた場合には、これらの裏付け書類を必要年数分、提示できなければ許可されません。
一方、解体工事業の場合は、以前勤務していた会社が解体工事業の登録業者であれば、実務経験証明書に1年に1行、必要年数分の工事の実績を記載し、当時勤務していた会社の代表者から証明印をもらえば、裏付書類は原則不要なのです。
ですから、実質的に実務経験期間を満たしている者が、裏付け書類が提示できないばかりに建設業の許可の専任技術者の資格要件を証明することは不可能なケースはあっても、解体工事業の技術管理者の場合は、すんなり要件審査をクリアしてしまうということになります。
次に、自己証明の扱いです。
これは、例えば当時勤務していた会社の代表者と喧嘩別れし、もう連絡は一切取りたくないが、解体工事業の登録申請を受けるためには、証明をもらわなければならないという場合、当時勤務していた会社の代表者の証明に代えて自分で自分の実務経験を証明することができるというものです。
しかし、それでは誰でも勝手に実務経験証明書を作成できてしまうわけですから、 建設業許可の場合は、一定の裏付け書類の提出を要求されます。
それは、代表者から証明がもらえない場合は、他の取締役の実印+印鑑証明で証明してもらう。それも不可能なら、その会社で社会保険に加入していた場合には、被保険者記録紹介回答票(社会保険加入期間証明)を添付し、在籍していた期間を明らかにし、自己の印鑑証明を添付することで自己証明をすることを認めています。
ですから、もし、当時勤務していた会社が社会保険に加入していなかった場合は、他の取締役からも証明をもらえない場合は、証明することができなくなり、実質的に実務経験はあっても許可がもらえないというケースがよくあるわけです。
では、解体工事業のほうはどうか?というと、建設業許可のように裏付けを求めないのが通常です(少なくとも、東京都と埼玉県。ただし埼玉県は印鑑証明書の添付は要求)。
もちろん、記載内容は事実に基づいて技術管理者となる方に記載していただきますが。
「通常」と書いたのは、千葉県などは何らかの裏付けを要求する場合があるからです。例えば、代表取締役から証明をもらえないことの理由書(書式が決まっているわけではありません)とか、前の会社に取締役として勤務していたのであれば、商業登記簿謄本の役員の履歴の記載があるものとか、当時の給与明細書や自己の名前で取引をしていたことがわかる契約書などがあれば、そういった書類等の提示を求める場合があるということです。
もし、解体工事業の登録について、悩んでいらっしゃるのなら一度、当事務所にご相談ください。