本店は東京で登記、建設業は埼玉の支店のみで営業。許可権者は誰?
建設業を営む営業所が建設業法上の本店となります。
まず、「建設業許可上の営業所」について、確認しておきましょう。
営業所とは、本店又は支店等で常時建設工事の請負契約の見積もり、入札、締結契約を行う事務所をいいます。
したがって、建設業に無関係な支店、営業所及び単に登記上の本店や特定の目的のために臨時におかれる工事事務所、作業所などは該当しません。
また、少なくとも、次の要件を備えていることが必要です。
- 契約締結に関する権限を委任されており、請負契約の見積もり、入札、契約締結等実体的な業務を行っていること
- 電話、机、各種事務台帳等を備え、住居部分等とは明確に区分された事務室が設けられていること
ここで注意する点があります。
その1つは、たとえば、代表取締役の自宅というだけの理由で本店所在地を東京都内に登記したが、会社の実質的な機能をしている事務所が埼玉県内に所在し、経営業務の管理責任者等である取締役も埼玉県内の事務所に常駐するような場合です。
このような場合は、登記上の本店が東京都内というだけであって、本店所在地では実質的な会社としての機能を備えていませんので、実質的に建設業の契約事務を営んでいる埼玉県にある事務所が、建設業許可上の本店ということになり、許可権者は埼玉県知事で埼玉県に申請することとなります。
しかし、次のような場合はどうでしょう?
その会社は東京都に登記上の本店を有しており、代表取締役はその登記上の本店に常勤し実質的な指揮命令権限を行使して、建設業以外の業を営んでいるが、建設業は埼玉県所在の営業所のみで行うというような場合です。
この場合には、経営業務の管理責任者等の資格要件を充たす常勤取締役と専任技術者を埼玉県の事務所に設置できるのでしたら、埼玉県知事の許可になります。
しかし、経営業務の管理責任者等の資格要件を充たす取締役(代表取締役が兼ねる場合は代表取締役)を東京の本店のみにしか常勤させられないような場合は、会社としては経営業務の管理責任者等の資格要件と専任技術者の資格要件を充たす者が存在するにもかかわらず、許可を得ることはできません。
このような場合には、埼玉県内の事務所に経営業務の管理責任者等の資格要件を充たす常勤取締役を設置して埼玉県知事の許可を取るか、もしくは専任技術者の資格要件を充たす者を都内の本店に通勤させるなりして、東京都知事の許可を取得するなどの対応が考えられます。
このように、建設業許可上の本店の実務上の運用は、あくまでも「経営業務の管理責任者等としての資格要件を充たす者が常勤する事務所」ということになり、本店の登記がある事務所の所在地が建設業許可上の本店となるわけでもなく、さらに指揮命令権限を有する代表取締役が常勤する事務所が本店となるわけでもありません。
ところで、宅地建物取引業の免許での本店の扱いは、あくまでも登記上の本店の所在する場所が本店となりますから、建設業と宅建業を兼業されている場合の本店の扱いは異なることがありますので、宅建業と建設業を兼業されている会社は注意が必要です。