建設業許可上の役員の常勤性の判断
ご質問
法人(株式会社)の代表者として大工工事業を営むT氏に当社の常勤の役員になってもらおうと思いますが、T氏は当社の常勤の役員として、経営業務の管理責任者等になることはできますか?当事務所対応
建設業法では、経営業務の管理責任者等の要件として、次のように定めています。法第七条第一号 国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
一 建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準に適合する者であること。
建設業法施行規則法第七条第一号 法第七条第一号の国土交通省令で定める基準は、次のとおりとする。
イ 常勤の役員等のうち一人が次のいずれかに該当する者であること
(1)(2)(3) 記載省略
ロ 常勤役員等のうち一人が次のいずれかに該当するものであって、かつ(以下省略)
このように、経営業務の管理責任者等となろうとする者は、法人の場合、建設業に関して常勤の役員としての経験がないとなれないということです。
建設業法上、役員とは、株式会社の場合、「取締役」のことを指しますので、監査役は含まれませんし、取締役でない営業所の長や事業部長などでは足りません。
そして、常勤とは、原則として、本社、本店等において休日その他勤務を要しない日を除き一定の計画のもとに毎日所定の時間中、その職務に従事していることをいいます。
許可申請者が法人である場合において、経営業務の管理責任者としての経験を有する者を常勤の役員に限ったのは、日常の経営業務を具体的に執行している役員が、この要件を満たすものでなければ、建設業の適正な経営が行われることを期待しえず、単に取締役会にのみ出席するのみであって日常の経営業務を執行する権限をもたない非常勤役員を含めることは妥当でないからです。
ここで、今問題になっていることは、他社の取締役が自社の常勤の役員として認めてもらえるのかということですよね。
これは、他社で常勤の取締役として建設業に関する実務経験が実際に5年以上ある場合に、御社の常勤の取締役として就任するにあたって、他社においては今後「非常勤の取締役」となるということであれば、御社において経営業務の管理責任者等になることができます。
その場合には、他社における経営業務の管理責任者等としての実務経験を証明できる書類、御社において常勤取締役であることを証明する書類並びに他社においては非常勤取締役であることの念書を差し入れます
ところが、今、T氏は自分が経営する株式会社の「代表取締役」です。
代表取締役の場合、たとえ、実質的には会社の事業運営に携わっておらず、他の取締役が実質的に事業運営を遂行している場合であっても、何かあった場合には、会社を代表しなければならない立場ですので、埼玉県の場合は、「今日から、他社では非常勤の代表取締役になった」ということはできないことになっています。
しかし、埼玉県の場合は、代表取締役が2名以上いる場合は、他の取締役の場合と同様に、非常勤証明書を差し入れれば、他社の経営業務管理責任者になることができます。他の都道府県については、各都道府県の建設業許可担当窓口に確認する必要があるでしょう。
さらに常勤性については、次の事項にも注意する必要があるでしょう。
「建築士事務所を管理する建築士、宅地建物取引業者の専任の取引主任者等、他の法令で専任を要するものと重複する者は、その専任を要する営業体及び場所が同一である場合を除きここでいう常勤であるものには該当しないものと解される」ということです。
つまり、同一人物が建設業の経営業務管理責任者となり、建築士事務所を兼営し、その建築士事務所を管理する建築士である場合であっても、営業体や営業所が異なる場合は常勤とはいえませんので、そのような方を経営業務の管理責任者等に迎えることはできません。