建設業許可の許可要件 その1
「経営業務の管理責任者等を設置していること」とは?
※令和1年6月12日に公布された「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律」により、経営業務管理責任者の配置規制の見直しが行われ、令和2年10月1日から施行されています。
経営業務の管理責任者等の要件については、建設業法第7条1号において、国土交通省令で定める基準に適合する者であることとされております。
建設業法第7条1号 国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。 一 建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準に適合する者であること。 |
そして、「国土交通省令で定める基準」は建設業施行規則第7条一号に定められています。
建設業法施行規則第七条 法第七条一号の国土交通省令で定める基準は、次のとおりとする。 一 次のいずれかに該当するものであること。 イ 常勤役員等のうち一人が次のいずれかに該当する者であること。 (1) 建設業に関し五年以上経営業務の管理者としての経験を有する者 (2) 建設業に関し五年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る。)として経営業務を管理した経験を有する者 (3) 建設業に関し六年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補助する業務に従事した経験を有する者 ロ 常勤役員等のうち一人が次のいずれかに該当する者であって、かつ、財務管理の業務経験(許可を受けている建設業者にあっては当該建設業者、許可を受けようとする建設業を営む者にあっては当該建設業を営む者における五年以上の建設業の業務経験に限る。以下このロにおいて同じ。)を有する者、労務管理の業務経験を有する者及び業務運営の業務経験を有する者を当該常勤役員等を直接に補佐する者としてそれぞれ置くものであること。 (1) 建設業に関し、二年以上役員等としての経験を有し、かつ、五年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験を有する者 (2)五年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し、二年以上役員等としての経験を有する者 |
ただし、この条文を読んだだけでは、内容を正確に理解するのは困難であり、あわせて最新の建設業許可事務ガイドラインを読み込む必要があります。
1 | 建設業許可事務ガイドラインについて(平成13年4月3日国総建第97号 総合政策局建設業課長から地方整備局建政部長等あて) 最終改正 令和2年12月25日国不建第311号 (※ここからダウンロードいただけます) |
これらを丁寧に読み込んで理解するのは大変ですので、経営業務の管理責任者等になることができる職制上の地位や経営業務の管理責任者等の経験として認められる職制上の地位、その経験の必要年数などを図表にまとめました。ダウンロードして、一緒にご覧いただければと思います。
1.経営業務の管理責任者等として認められる経験と職制上の地位
2.経営業務の管理責任者等の要件
特に法人に関する部分が難解なのですが、次の用語の意味をきちんと理解していただくと、法令の内容がよくご理解いただけると思います。
まず、経営業務の管理責任者等の要件としての建設業法施行規則第7条第1号(イ)柱書、(ロ)は柱書でいう「常勤役員等」の役員、建設業法第5条3号及び建設業法施行規則第7条第1号ロ(1)(2)でいう「役員等」の役員、国土交通省のホームページ上、建設業許可>許可の要件(参考)でいう「法人の役員」の役員は、それぞれ役員に含まれる者の範囲が異なっていますので、それぞれいう役員の範囲と「等」、 「経営業務の管理責任者等」の「等」が何を指すか?
建設業許可事務ガイドライン第7条関係1.@でいう「これらに準ずる者」と同Fでいう「経営業務の管理責任者に準ずる地位」の内容の違い
さらに、「経営業務管理責任者になれる職制上の地位」と「経営業務管理責任者になるために必要な経験」の違いを意識していただくと明確にご理解いただけると思います。
経管要件1.常勤であること
まず、経営業務の管理責任者等は「常勤」でなければなりません。常勤とは、原則として本社、本店等において休日その他勤務を要しない日を除き一定の計画のもとに毎日所定の時間中、その職務に従事している状態をいいます。
経管要件2.経営業務の管理責任者等になれる職制上の地位
次に、経営業務の管理責任者になれる職制上の地位についてですが、まず、個人である場合は「個人の事業主本人」又は「支配人」である必要があり、建設業法施行規則第7条第1号イ柱書及びロ柱書でいう「常勤役員等」の「等」である必要があります。この「等」は、個人事業主本人と個人事業である場合の商業登記された支配人を指します。「常勤」は「等」にもかかりますので、常勤でなければなりません。(根拠:建設業許可事務ガイドラインP23 第7条関係1.@)。
個人である場合の支配人は、商業登記のある支配人に限ることに留意してください。
次に、法人である場合は、建設業法施行規則第7条1号イ柱書・ロ柱書でいう「常勤役員等」の「役員」である必要があります。
ここでいう役員とは、法人である場合の1.業務を執行する社員 、2.取締役、3.執行役、4.これらに準ずる者の4つであり(※根拠:建設業許可事務ガイドラインP23 第7条関係1.@))、これらの地位が「経営業務の管理責任者等になることができる職制上の地位」となります。
「経営業務の管理責任者等になるために必要な経験として認められるための職制上の地位」とは範囲が異なることに留意する必要があります。
「経営業務の管理責任者等になるために必要な経験として認められるための職制上の地位」には、1.業務を執行する社員 、2.取締役、3.執行役、4.これらに準ずる者のほかに、5.支店長・営業所長等(政令第3条使用人である者)や6.経営業務管理責任者に準ずる地位にある営業所次長や副支店長等が含まれます。
こちらの資料をご覧いただくと、整理できると思います。
1.経営業務の管理責任者等として認められる経験と職制上の地位
では、次に、法人の場合の「常勤役員等」の役員の内容について個々に具体的に見ていきましょう。
法人:経管者等になることができる職制上の地位の具体的内容
1)業務を執行する社員とは、持分会社(合同・合名・合資会社といった3つの会社形態)の業務を執行する社員(社員というのは従業員ではなく、会社の出資者の地位)を意味します。2)取締役とは、すべての株式会社に必ず置かなければならない機関です。会社運営には、決定機能、執行機能、監督機能、監査機能があり、機関設計により取締役のその権限は異なりますが、最低限、決定機能と監督機能を担います。経営業務の管理責任者は代表取締役である必要はありません。
3)執行役とは、指名委員会等設置会社の執行役を意味し、「執行役員」とは意味が異なります。
指名委員会等設置会社とは、株式会社の新しい統治機構で指名委員会、監査委員会及び報酬委員会を置く会社で、この3つの委員会の活動などを通じて経営の監督を行う一方で、取締役会が選任する執行役が取締役会から権限の委譲をされて業務執行を行う形態です。
会社としての意思決定及び職務執行の迅速化、内部牽制機能の強化の必要性から、取締役が業務執行に携わらない代わりに業務執行権限を執行役に委ねているものです。
一方、執行役員は、取締役の人数を減らし意思決定の迅速化を図るという目的で浸透してきたという背景がありますが、常務・専務などと同様、会社の内部的な呼称であり、会社法上の義務や役割が規定されているわけではないところが異なる点です。
執行役と執行役員は意味が異なるだけでなく、経営業務管理責任者として認められる経験も異なりますので、混同しないようにご留意ください。
4)これらに準ずる者とは、「法人格のある各種組合等の理事等のほか、業務を執行する社員、取締役又は執行役に準ずる地位にあって、建設業の経営業務の執行に関し、取締役会の決議を経て取締役会又は代表取締役から具体的な権限移譲を受けた執行役員等」を指します。(※根拠 「建設業許可事務ガイドライン第7条関係1.@)。
したがって、「これらに準ずる者」に該当しなかった執行役員、監査役、会計参与、監事及び事務局長等は原則として含まれません。
国土交通省のホームページによれば、「株式会社又は有限会社の取締役」「指名委員会等設置会社の執行役」「持分会社の業務を執行する社員」「法人格のある各種組合等の理事」は「法人の役員」であるとの記載があり、この「法人の役員」中には「執行役員」は含まれませんが、建設業法施行規則第7条第1号イ柱書及びロ柱書でいう「常勤役員等」の指す役員には、「法人格のある各種組合等の理事」、「執行役員」のいずれも、「これらに準ずる者」として役員に含まれます。
つまり、「法人格のある各種組合等の理事等」と「執行役員等」が、建設業許可事務ガイドライン 第7条関係1@(P25・26)でいう「これらに準ずる者」と同じ括りになっていますが、この2つは経営業務の管理責任者等として認められる経験の内容が同一ではなく、法人格のある各種組合等の理事等のほうは「経営業務の管理責任者としての経験」(建設業許可事務ガイドライン第7条関係1D(P24) )、執行役員等のほうは「経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る)として経営業務を管理した経験」(建設業許可事務ガイドライン第7条関係1E(P25) )となるところにご留意いただく必要があります。
さらに、執行役員等については、「これら(業務を執行する社員、取締役、執行役)に準ずる者」であって、かつ、 「経営業務の管理責任者に準ずる地位」であることが建設業許可事務ガイドライン第7条関係1@及びFで示されていますが、「法人格のある各種組合等の理事等」は、「経営業務の管理責任者に準ずる地位」ではなく、単に「これらに準ずる者」であるという分類上の違いがあります。
経管要件3 経営業務の管理責任者等として認められる経験
さて、経管要件1,2で見てきたとおり、常勤であり、経営業務の管理責任者等になるための職制上の地位にある方が、経営業務の管理責任者等になるには、要件の3番目として、経営業務の管理責任者等として認められる一定の経験が必要です。これは職制上の地位に応じて次の3つに分類できます。
A | 経営業務の管理責任者としての経験 |
---|---|
B | 経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る)として経営業務を管理した経験 |
C | 経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験 |
経営業務管理責任者として認められるために必要な経験年数
Aは、「経営業務の執行等、建設業に関して経営業務について総合的に管理した経験」について5年以上証明できれば、経営業務管理責任者と認められます。Bは、「取締役会によって定められた業務執行方針に従って、代表取締役の指揮および命令のもとに、建設業に関して具体的な業務執行に専念した経験」について5年以上証明できれば、経営業務管理責任者と認められます。
Cは、「建設工事の施工に必要とされる資金調達、技術者及び技能者の配置、下請業者との契約の締結等経営業務全般」について6年以上証明できれば、経営業務管理責任者として認められます。
ちなみに、建設業法施行規則第7条第1号イ(3)において使っている「補助する」と、建設業許可事務ガイドラインP25 Fで使っている「補佐する」は、統一性がありませんが、同じ意味で使用しているものと思われます。
経営業務の管理責任者等の経営経験の拡大と対象業種の拡大
ところで、令和2年10月1日施行の改正建設業法においては、個人の経験によって能力を担保していたこれまでの考え方を見直し、組織の中で経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有することを求めることとされ、経営経験の拡大と対象業種を拡大する改正がなされました。
これは、常勤役員等が上記表のA〜Cにおける経験について必要年数を満たすことができない場合でも、一定の要件のもとに組織の中で経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を認め、建設業許可を受けられるようにするというものです。
具体的な内容は、建設業法施行規則第7条第1号ロ(1)(2)で定められています。
建設業法施行規則第七条 法第七条一号の国土交通省令で定める基準は、次のとおりとする。 一 次のいずれかに該当するものであること。 イ 省略 ロ 常勤役員等のうち一人が次のいずれかに該当する者であって、かつ、財務管理の業務経験(許可を受けている建設業者にあっては当該建設業者、許可を受けようとする建設業を営む者にあっては当該建設業を営む者における五年以上の建設業の業務経験に限る。以下このロにおいて同じ。)を有する者、労務管理の業務経験を有する者及び業務運営の業務経験を有する者を当該常勤役員等を直接に補佐する者としてそれぞれ置くものであること。 (1) 建設業に関し、二年以上役員等としての経験を有し、かつ、五年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験を有する者 (2)五年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し、二年以上役員等としての経験を有する者 |
建設業法施行規則第7条第1号ロの柱書では、常勤役員等のうち一人が次のいずれかに該当する者であって、かつ、財務管理の業務経験を有する者、労務管理の業務経験を有する者及び業務運営の業務経験を有する者を当該常勤役員等を直接に補佐する者としてそれぞれ置くものである場合に、組織の中で経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有する、とされることとなりました。
財務管理の業務経験、労務管理の業務経験及び業務運営の業務経験は、許可を受けている建設業者にあっては当該建設業者、許可を受けようとする建設業を営む者にあっては当該建設業を営む者における5年以上の建設業の業務経験に限ることに注意してください。
「直接に補佐する者をそれぞれ」、ですから、例えば財務管理の業務経験者だけでは足りず、財務管理、労務管理、業務運営の全業務に関する経験者を当該常勤役員等の直接に補佐する者として置くことになります。そして、直接に補佐しているかどうかについては、組織図等で確認できることが必要です。
また、これら補佐者の経験は、一人が全てを兼ねることもできますし、それぞれ5年ずつ合計で15年必要ということではなく、5年の間に3つの業務経験を同時に行っていたことが証明できれば、5年の経験でよいということになります。
常勤役員等のうち一人の要件としては、
1)同上同号(1)で、
経験の拡大として、建設業関して2年以上役員等としての経験を有し、かつ、5年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験を有する者
2)同条同号(2)で、
対象業種の拡大として、5年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し2年以上役員等としての経験を有する者
とされています。
1)は、「建設業に関し、2年以上の役員等の経験を含む5年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験を有する者」と言い換えることもできます。
ところで、ここでいう「役員等」の範囲は、「常勤役員等」でいう「役員等」の範囲と異なります。
建設業法施行規則第7条1号ロ(1)(2)でいう「役員等」は建設業法第5条3号に記載があり、「業務を執行する社員、取締役、執行役若しくはこれらの準ずる者又は相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役若しくはこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者をいう」という意味です。
建設業法第五条 (許可の申請) 一般建設業の許可(第八条第二号及び第三号を除き、以下この節において「許可」という。)を受けようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、二以上の都道府県の区域内に営業所を設けて営業をしようとする場合にあつては国土交通大臣に、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業をしようとする場合にあつては当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事に、次に掲げる事項を記載した許可申請書を提出しなければならない。 一 商号又は名称 二 営業所の名称及び所在地 三 法人である場合においては、その資本金額(出資総額を含む。第二十四条の六第一項において同じ。)及び役員等(業務を執行する社員、取締役、執行役若しくはこれらに準ずる者又は相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役若しくはこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者をいう。以下同じ。)の氏名 以下省略 |
一方、建設業法施行規則第7条1号イ及びロの柱書でいう「常勤役員等」は、建設業許可事務ガイドライン(23ページ) 第7条関係1.@で定義されており、それによれば次のように書かれており、上記の赤字アンダーラインで示した部分は含まれておりませんので、建設業法施行規則第7条1号ロ(1)(2)でいう「役員等」のほうが範囲が広いということになります。
建設業許可事務ガイドライン(23〜24ページ)
第7条関係1.@ 「常勤役員等」とは、法人である場合においてはその役員のうち常勤であるもの、個人である場合にはその者又はその支配人をいい、「役員」とは、業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらの準ずる者をいう。「業務を執行する社員」とは、持分会社の業務を執行する社員をいい、「取締役」とは株式会社の取締役をいい、「執行役」とは、指名委員会等設置会社の執行役をいう。また、「これらの準ずる者」とは、法人格のある各種組合等の理事等をいい、執行役員、監査役、会計参与、監事及び事務局長等は原則として含まないが、業務を執行する社員、取締役又は執行役に準ずる地位にあって、建設業の経営業務の執行に関し、取締役会の決議を経て取締役会又は代表取締役から具体的な権限移譲を受けた執行役員等については含まれるものとする。 |
経管理者として認められるA・B・C3種類の経験の具体的内容
A.「経営業務の管理責任者としての経験」
まず、A.「経営業務の管理責任者としての経験」の意義ですが、「建設業許可事務ガイドラインP24 D」に記載があり、それによれば、建設業許可事務ガイドライン 第7条関係1.D (24ページ) 「経営業務の管理責任者としての経験を有する者」とは、業務を執行する社員、取締役、執行役若しくは法人格のある各種の組合等の理事等、個人の事業主又は支配人その他支店長、営業所長等営業取引上対外的に責任を有する地位にあって、経営業務の執行等建設業の経営業務について総合的に管理した経験を有する者をいう。」 |
となっています。
この記載のとおり、Aが「経営業務管理責任者として認められる経験」として認められる職制上の地位は、法人の役員(業務を執行する社員、取締役、執行役若しくは法人格のある各種の組合等の理事等)と個人の事業主又は支配人のほか、支店長、営業所長等であり、法第7条第1号でいう役員のうち、「これらに準ずる者」に含められる「執行役員等」は含まないことに留意する必要があります。
そして、「経営業務の管理責任者としての経験」とは、同じくこの記載のとおり、これらの職制上の地位にある方が営業取引上対外的に責任を有する地位にあって、経営業務の執行等建設業の経営業務について総合的に管理した経験であることがわかります。
B.経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る)として経営業務を管理した経験
まず、B.「経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る)として経営業務を管理した経験」の意義を確認しましょう。「経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る)として経営業務を管理した経験」の内容については、建設業許可事務ガイドライン P25 Eに記載があります。
建設業許可事務ガイドライン 第7条関係1.E (25ページ) 「経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る)として経営業務を管理した経験」とは、取締役会設置会社において、取締役会の決議により特定の事業部門に関して業務執行権限の委譲を受ける者として選任され、かつ、取締役会によって定められた業務執行方針に従って、代表取締役の指揮および命令のもとに、具体的な業務執行に専念した経験をいう。 |
となっています。
取締役会設置会社において、取締役会の決議により特定の事業部門に関して業務執行権限の委譲を受ける者として選任されていなかったり、そのような立場で選任されていたとしても、取締役会によって定められた業務執行方針に従って、代表取締役の指揮および命令のもとに、具体的な業務執行に専念していない執行役員や監査役、会計参与、監事及び事務局長等での経験は含まれません。
執行役員等が建設業法第7条第1項の「これらに準ずる者」に該当するか否かの判断に当たっては、
1)執行役員等の地位が業務を執行する社員、取締役又は執行役員に次ぐ職制上の地位にあることを確認するための書類
⇒ 組織図その他これに準ずる書類
2)業務執行を行う特定の事業部門が許可を受けようとする建設業に関する事業部門であることを確認するための書類
⇒ 業務分掌規程その他これに準ずる書類
3)取締役会の決議により特定の事業部門に関して業務執行権限の移譲を受ける者が選任され、かつ、取締役会の決議により決められた業務執行の方針に従って、特定の事業部門に関して、代表取締役の指揮及び命令のもとに、具体的な業務執行に専念する者であることを確認するための書類
⇒ 定款、執行役員規程、執行役員職務分掌規程、取締役会規則、取締役就業規程、取締役会の議事録その他これに準ずる書類
が必要になります。「これらに準ずる者」に該当すると判断された場合には、さらに、
4)「執行役員等としての経営管理経験の期間を確認するための書類」として、
⇒ 取締役会の議事録、人事発令書その他これに準ずる書類
が必要になります。
この要件を満たしているかどうかの判断ですが、仮に、自社でこれに対応するように各規則等を整備したとしても、それが必ずしも認められるとは断言できませんので、審査する許可行政庁側もに事前に相談することが求めています。
C.経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験
まず、「経営業務の管理責任者を補佐数r業務に従事した経験」の意義ですが、建設業許可事務ガイドライン P25Fによれば、建設業許可事務ガイドライン 第7条関係1.F (25ページ) 経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験(以下「補佐経験」という。)とは、経営業務の管理責任者に準ずる地位(業務を執行する社員、取締役、執行役若しくは法人格のある各種の組合等の理事等、個人の事業主又は支配人その他支店長、営業所長等営業取引上対外的に責任を有する地位に次ぐ職制上の地位にある者)にあって、許可を受けようとする建設業に関する建設工事の施工に必要とされる資金の調達、技術者及び技能者の配置、下請業者との契約の締結等の経営業務全般について従事した経験をいう。 |
とあります。
この説明のとおり、「経営業務管理責任者に準ずる地位」とは、業務を執行する社員、取締役、執行役若しくは法人格のある各種組合等の理事等、個人の事業主又は支配人その他支店長、営業所長等営業取引上対外的に責任を有する地位に次ぐ職制上の地位にある者です。
この経験が6年以上の場合に経営業務の管理責任者として認められますが、6年以上の補佐経験を有する者については、法人、個人又はその両方における経験であるかを問わないものとされています。
「経営業務を補佐した経験」に該当するか否かの判断は、「建設業許可事務ガイドライン P25 ハに記載があり、規則別記様式第7号及び別紙6−1による認定調書に加え、次に掲げる書類において確認することになっています。
1)被認定者による経験が業務を執行する社員、取締役、執行役若しくは法人格のある組合等の理事等、個人の事業主又は支配人その他支店長、営業所長等営業取引上対外的に責任を有する地位に次ぐ職制上の地位における経験に該当することを確認するための書類
⇒ 組織図その他これに準ずる書類
2)被認定者における経験が補佐経験に該当することを確認するための書類
⇒ 業務分掌規程、過去の稟議書その他これらに準ずる書類
3)補佐経験の期間を確認するための書類
⇒ 人事発令書その他これらに準ずる書類
これら事項がそれぞれの書類上で確認できるか審査されます。
常勤役員等の直接補佐者に要求される、財務管理、労務管理又は業務運営の経験
「財務管理の業務経験」とは、建設工事を施工するにあたって必要な資金の調達や施工中の資金繰りの管理、下請業者への代金の支払いなどに関する業務経験(役員としての経験を含む。以下同じ。)をいいます。
「労務管理の業務経験」とは、社内や工事現場における勤怠の管理や社会保険関係の手続きに関する業務経験をいいます。
「業務運営の経験」とは、会社の経営方針や運営方針の策定、実施に関する業務経験をいいます。
これらの経験は、申請を行っている建設業者又は建設業を営む者における経験に限られます。
「直接に補佐する」とは、組織体系上及び実態上常勤役員等との間に他の者を介在させることなく、当該常勤役員等から直接指揮命令を受け業務を常勤で行うことをいいます。
本号ロに該当するか否かの判断は、規則別記様式第7号の2及び別紙6−2による認定調書に加え、次に掲げる書類において、被認定者が規則第7条第1号ロに掲げる条件に該当することが明らかになっていることが確認されることになっています。
1)被認定者による経験が業務を執行する社員、取締役、執行役若しくは法人格のある組合等の理事等、個人の事業主又は支配人その他支店長、営業所長等営業取引上対外的に責任を有する地位に次ぐ職制上の地位における経験に該当することを確認するための書類
⇒ 組織図その他これに準ずる書類
2)被認定者における経験が補佐経験に該当することを確認するための書類
⇒ 業務分掌規程、過去の稟議書その他これらに準ずる書類
3)補佐経験の期間を確認するための書類
⇒ 人事発令書その他これらに準ずる書類
上記のA・B・C3種類の経験の申請・変更届出の難易度
Aが従来からの原則的な経営業務管理責任者として認められる経験ですので、今後もAで申請・届出を行うのが王道であることに変わりはありません。しかし、取締役以外の職制上の地位にある者についても経営業務管理責任者として認めてもらえる可能性があるとなると、取締役人事についてそれほど神経質にならなくてもよいと考えるかもしれません。
ところが、B、Cでの経験での申請や届出は、少し確認書類が簡素化されたとはいえ、非常にハードルが高いです。
その確認書類として要求されているものを一目見れば、経営業務管理責任者の経験であると客観的に判断するにはかなり困難な内容になる書類であることがご理解いただけると思います。
そのため、申請・届出時点における、許可行政庁による個別の審査が裁量によって行われますので、認定される可能性も著しく低くなることが容易に想像できます。
しかし、今後B、Cでの経験で申請・届出する可能性があるのならば、将来に備えて定款や組織図、業務分掌規程、執行役員規程等を見直していただくほか、取締役会議事録、稟議、人事発令書等はこれを意識した内容で作成していただいたうえ、さらに過去の状況が分かるように保存していただく必要があります。
他の役職との兼務について
会社が建築士事務所や宅地建物取引業を兼業している場合などで、建設業の専任の技術者になろうとする者が管理建築士あるいは専任の宅地建物取引主任者などの他の法令等で、専任性を必要とされている場合、その専任性を必要とする会社及び営業所が同一であれば経営業務管理責任者になれます。また、経営業務管理責任者と専任の技術者は同一営業所内においては要件を満たしていれば1人で両方を兼ねることができます。